「神々の山嶺」全部読んだ~エベレストって凄い、それに挑む人々さえも~【感想】

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枝と申します。

以前から気になっていた漫画「神々の山嶺」を全巻見たので感想です。

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夢枕獏×谷口ジローは凄い!

筆者は山のことなぞさっぱり分からない人間なので、作中に出てくるトラバースだのビバークだのいう単語を雰囲気で捉えて読むレベルだったのですが、それでも非常に楽しく読むことができました。

この作品は主人公の深町(なんか人生が燻ってる)が、山に憑りつかれた男・羽生(山以外人生に何もない)の行方を追うというミステリー仕立てになっているのですが、原作が小説という事もあり次々読み進めたくなる優れた構造をしています。突如日本から姿を消した羽生という男がどんな人物なのかを追うパート、そしてついに見つかった羽生がその人生を賭けて何を成し遂げようとしているのかを追うパート、ざっくり分けるとこんな感じなのですが、どちらも次が気になり過ぎて早々と読了してしまいました。

そしてとにかく谷口ジローの作画が圧巻の一言です。漫画なので当たり前に全編白黒なのですが、雪にまみれて人を拒む険しい岩肌がモノトーンで緻密に描かれており、山の高さ、果てしなさ、怖さ、存在感がありありと伝わってきます。町中の背景も手抜き一切無しですし、なんせ絵が上手いです。上手い、絵が。

登山の「と」の字も知らん人でも、シンプルにストーリーの面白さで引き込まれることは間違いないでしょう。

様子のおかしい男2人が主人公

羽生の行方を追う深町と、山に憑りつかれた男羽生がこの作品の主人公と言えるのですが、山の事を全く知らない自分からすると二人とも様子がおかしいと言わざるを得ません。

まずは様子のおかしい男筆頭の羽生ですが、幼い頃に天涯孤独になって以降、ひたすら山登り(ここでいう山はもはや岩壁でもある)のみを人生としています。「誰もやっていない事を最初にやること」に対しても凄まじい拘りがあり、最初じゃなきゃ意味が無いとか、成し遂げても死んだらゴミとか、生きてるか生きてないかは山登りの過程でしかないとか、独自の理論を展開して多くの人に理解を拒まれ続けます。作中でも何回か「人は何故山に登るのか」というジョージマロリーへの有名な質問が命題として出てくるのですが、羽生の答えが我々一般人にとっての回答にならないのは間違いないでしょう。

そんな様子のおかしい男、羽生に引き込まれて様子がおかしくなってしまうのが深町です。ネパールの雑貨屋で見つけた古いカメラをきっかけに、ジョージマロリーはエベレストの頂を踏めたのか、何故このカメラはここにあるのか、そして町ですれ違った羽生は何故ここにいるのかを調査し始めます。ちなみに深町はエベレストの死亡事故を目撃、撮影してしまったり、彼女を親友にNTRれた挙句そいつは滑落事故で死んでしまって彼女と微妙な関係になっていたり、なんか人生が上手くいっていない感満載の人です。そんな深町も話が進むにつれて、自分の人生のあるか分からない答えはエベレストの頂きにあるのかもしれないし無いのかもしれないみたいなノリで羽生とエベレストに命を賭ける決意を決めるのですが、やはり様子はおかしいと言わざるを得ません。

そんな様子のおかしい二人が主人公なので、登場人物の動機に対する感情移入はやや高難易度です。理屈とか理論とかの理性を超越した先に「エヴェレストを登る」という行為があり、行動の理由などは所詮後付けでしかなく、単にパッションとも言い切れないメラメラとした衝動が、様子のおかしい二人をエヴェレストに駆り立てる。

私個人としては、この二人に対して「怖い」という感情を抱くことすら正しいと思っています。

高い山の怖さを学べる

私は高尾山や大文字山といったハイキングレベルの山にしか登ったことが無く、日本の百名山に登った事も無ければ海外の山なんて名前すら知らないレベルの知識です。だからこそ、8000m級の山に登るというのがどれほど危険な事かを初めて知ることができました。

そもそも「落ちたらほぼ即死の岩壁みたいなところを登らないといけない」という時点で筆者としてはコビーになっている(命がもったいだい)のですが、適切なリソース管理や天候・日程の選定、各種装備品の厳選と、落石や雪崩に巻き込まれない運もあって初めて登頂できる山が存在するという事に驚愕しました。出て来た感想はシンプルに「なんでそんなことするの?」ですね。

そしてこの漫画、そういった前提を当たり前にクリアできる手練れの山屋ですらワンミスで死にかけるという描写がかなり壮絶です。

羽生も深町も「今一瞬でも諦めたら余裕で死ねる」という状況に陥り、あの世とこの世の狭間でウトウトするシーンが存在しているのですが、楽になりたいという人間の弱さが一瞬でも首をもたげたら命を落とす山岳事故のヤバさがねっとりと描かれます。ジャンプ漫画的に「心が強ければ生き残れる」とかではないとはいえ、強い精神力が無ければ普通に死んでたと納得させられるだけの極限状態は、他の漫画では中々お目にかかれないこの漫画ならではの描写だと思いました。

おわりに

という訳で今回は、漫画「神々の山嶺」を全巻見たので感想でした。全5巻でサクッと読める名作なので、山に全く興味の無い方でも気軽に読んでみて欲しいと思います。

ちなみに直近では「Cairn」という登山ゲームがリリースされて高評価を得ていたり、人々の山に対する何らかの憧れはどれだけ時代が進んでも普遍的な物なのかもしれませんね。

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