枝と申します。
普段はしょうもないB級映画ばっかり見てるんですが、たまには昔の名作も見ようという事でエリック・ロメール監督の『海辺のポーリーヌ』を鑑賞しました。
目次
あらすじ
14歳のポーリーヌとそのいとこであるマリオン。そんな彼女たちが海岸線で送ったひと夏の恋愛事情を描いた物語です。
登場人物
ポーリーヌ:恋に恋するお年頃な14歳の女の子。作中でも1番大人の考え方を持っています。しかしながら出会って2日の男の子と肉体関係を結んでしまうあたりはまだまだお若い。水着がまぶしい。
マリオン:ポーリーヌのいとこでスタイルがグンバツなお姉さん。出会って1日のアンリと肉体関係を結んでしまうような恋愛観をお持ち。水着がまぶしい。
ピエール:作品一の苦労人ポジション。マリオンとポーリーヌに「あんな奴らやめとけ!」と注意するも彼女たちは聞く耳を持たず、逆にシカトされキレられ散々な目に。マリオンの事が好き。
アンリ:世界を飛び回る言語学者でプレイボーイ。出会って1日のアンリと肉体関係を結ぶも数日後にはまた別の女(売り子)と肉体関係を結び、若いシルヴァンにその罪をなすりつけ、事実がばれた時には「重い女は嫌だった^^」とか言い出す。しかも娘がいる。ハゲ。プーチンに似ている。
シルヴァン:若い男の子でポーリーヌと関係を結ぶ。空気が読める。よく自転車に乗っている。
皆で愛について学ぶ話
この作品はポーリーヌ、マリオン、ピエール、アンリがそれぞれ考える「愛」についてひたすら語り合うような作品です。BGMもCGもアクションもありません。長いカット割りでそういった概念についての会話が延々と続きます。
1980年代フランスの話なので現代を生きる自分にとって共感できる部分はかなり少なかったですね、、、
ただそういった会話シーンが多くても『海辺のポーリーヌ』が面白い作品として名を残しているのは、ひとえに映像の作りと会話のワードセンスが良いからなのでしょうね。
マリオンとピエールの対照的な愛
「大恋愛をしたことが無い」というマリオンの考える愛とは燃えるような愛です。理屈は抜きにして彼女自身が燃えるような愛。外見から心の性質までを見抜くのが愛だと彼女は言います。
そして終始苦労人のポジションを演じることとなるピエールは、そんなマリオンに恋愛感情を持っている訳です。彼は昔の恋愛感情がよみがえったとしてマリオンに恋慕するのですが、マリオンはたった1日ともに過ごしただけのアンリに好意を寄せてしまいます。
過去や人柄、それまでの経験や記憶をもとにして愛をしているピエールと、たった1日いきずりの男と関係を持ってしまう、いや、持ててしまうマリオンの考え方は非常に対照的だと言えましょう。
ピエールは作中でも数回トラウマになるレベルのこっぴどい振られ方をするのですが、それでも諦めないのは彼には彼なりの「愛」があるからなのでしょうね。
マリオンはメンヘラ?
マリオンが好きになってしまったアンリは世界各国を飛び回るプレイボーイで女性関係が絶えません。
それを察するピエールは「アンリはやめとけ」とマリオンを強く説得するのですが、マリオンにとっては馬耳東風。それどころか「アンリが悪く言われれば言われるほど燃える」とまで言い出す始末。
クズ男にずぶずぶハマっていく様はあたかもメンヘラのようですね。って言ったら各所から怒られそうだけど。
ピエールは私たちの希望
さてポーリーヌもマリオンも出会って1,2日の男とHしてしまうような貞操感をお持ちなわけですが、常にそんな彼女たちの身を案じて行動するのはピエールなんですね。言い方を変えればいつまでも彼女たちに付きまとう男でしかないわけですが、アンリの悪事を知っている視聴者からすると彼のいう事が一番もっともに思える訳です。
燃えるような愛を求めてクズ男にハマっていくマリオンと、邪険に扱われつつもマリオンの事を思って行動するピエール。私は断然ピエールを応援したくなりましたね。私服がダサいけど。
美しい映像と環境音
この作品にはBGMがありません。BGMの代わりになるのが波の音です。波の音に白い砂浜、果てしない水平線。そういった美しい画の作りがこの映画には非常に重要だと思っています。
だってそうでもなければ火サスレベルのドロドロした恋愛事情の話ですからね。誰が誰と寝たとか捨てた捨てられたとかって感じで。
そんな話を取り扱っているのにも関わらずこの作品の後味がすっきりしているのは、美しい映像づくりと監督の技量によるものなのでしょう。
おわりに
フランス人の恋愛感覚ってこんなんなの?と思ってしまうこと間違いなしですが、セリフ回しのシャレている感じや映像の美しさ、バカンス特有の浮ついた空気感など表現しているものは非常に素晴らしい映画です。
殺伐とした映画に疲れた方、ぜひご覧ください。