早速だが皆さんはVtuberという存在をご存知……だろうから特に説明は無く進ませて頂くとして、
「Vtuberって何?」と聞かれたときにどんな答えを用意しているだろうか。
一昔前は、2DというだけでVtuberではないと一蹴され、やれ紙人形だ割り箸人形だと揶揄されるような時期もあったが、今やVtuberという言葉のカバーする範囲はますます広がる一方だと思っている。
3Dの体でYoutubeをやっている人たちは皆Vtuberだし、画面に2Dがある配信者も皆Vtuberだし、なんか可愛い絵で歌とか上げちゃってる人も恐らくVtuberだし、ヒカキンもLIVE2DがあるからVtuberだし、なんならもう小林幸子もVtuberで良いんじゃないかというような、そんな世相になっているのでは無かろうか。
そんな中で今更「Vtuberとは」という疑問を真剣に考えているのは学者さんかヲタクくんくらいであろう。
ちなみに私は後者なので、「Vtuberとは何なのか」と聞かれた際の答えを一つ持っている。
それは「インターネットのキャラクター」という認知である。
目次
インターネットのキャラクター
ここで早速クイズだ!
インターネットのキャラクターを10人挙げよ!
「たった10人か……ちょろいもんだぜ……w」
ドナルド・マクドナルド
ムスカ大佐
霧雨魔理沙
超てんちゃん
キーボードクラッシャー
海馬瀬人
でじこ
やる夫
ARuFa
初音ミク
実は難しいインターネットのキャラクター
答え合わせをするまでもないが、先ほどの回答に純然たるインターネット生まれのキャラクターというのは殆ど存在しない。
実はアニメのキャラだったり、ゲームのキャラだったり、何らかの看板を背負ったキャラだったり、そもそもリアルなヒューマンだったり。
「インターネットで有名なキャラクター」は「インターネットのキャラクター」とイコールではないのだ。
ジャンルとしてのインターネット
それはそれとして。
もし皆さんが『いないいないばぁ』のワンワンを誰かに説明する必要があるとなった時(親を人質に取られたとかで)、最初に述べるのは「NHKのキャラクター」という情報ではなかろうか。同じようにジャムおじさんを説明する必要がある時(恋人を人質に取られたとかで)、この人は「アンパンマンのキャラクター」です。と、最初にそう述べることだろう。
この説明の中で重視されているのは伝わりやすさであり、伝わりやすさとはつまり大分類の提示という部分になってくる。
NHKのキャラクターです、アンパンマンのキャラクターですと聞けば、あーそういう子供向けな感じのキャラクターなのねと理解できるだろうし、対象年齢が低めの世界観に登場するキャラクターなので酒やギャンブルとは無縁の存在である事が容易に想像できるはず。
他のキャラクターを聞かれた場合でも、この○○の部分には「野球」だったり「アニメ」だったり「漫画」だったりといった、そのキャラクターのざっくりとした性質を示す大分類が入ることとなる。
ここからはそうした「分類の提示」という部分に注目し、本題であるVtuberを見ていく。
Vtuberって何?
個人勢ながらも活躍目まぐるしいピーナッツくんと甲賀流忍者ぽんぽこのお二人。彼らを「どう説明する?」となったら……
これはもう「インターネットのキャラクターです」と説明するしか無いのではないだろうか。
甲賀市出身のVtuberで〜などと説明するのは余分な情報、専門用語が多い。Youtuberと言うには見た目がアニメっぽすぎるので、突っ込まれた際にまた説明の手間が増える。アニメのキャラクターと言えば……まぁピーナッツくんはそうと言えるが、適切な説明とは思えない。
結果として導き出されるのは「なんかインターネットのキャラクター」という言葉で、これには細かい説明をぶっ飛ばす意図とともに、インターネットという広い媒体をメインに据えて何か色々やっている人というある種の良く分からなさが包含されている。
気づけばスペイン村の人となっていた周央サンゴと、超新星爆発の如く鮮烈なデビューを果たしヤクルト社のCMにも登場した壱百満天原サロメ。スペイン村の看板やテレビを指差されて「これって何のキャラクター?」と聞かれたら……
一つの回答としては「なんか美少女キャラクター」というものが考えられる。なんか美少女キャラクターだしね。
ただ、この回答は「誰が声優やってるの?」という質問に答えられない(余計な説明が増える)ほか、ンゴの場合であればスペイン村の宣伝のために生み出されたキャラクターであるかのような誤解を生みかねない。
(にじさんじというVtuberグループの中で世怜音女学院というユニットみたいなものに所属している周央サンゴという)キャラクターがスペイン村とタイアップコラボをしている。
の括弧内を全てぶっ飛ばせるので、これもまた結果として「なんかインターネットのキャラクター」と答えるのが最も楽ちんなのだ。
Q. インターネットってカテゴリとしては漠然としすぎてへん?
A. それはそう。
なのだが、その漠然さこそが重要と言える。
人気ブロガーのARuFaはインターネットの事を「楽しい地獄」で「怖い天国」と表現しているが、「インターネット」というのは実際どこを切り取ってみても乱雑と、混沌としているものだ。
そんな中で生まれたVtuberという概念は、実際の所歴史も浅ければ参考文献も大して存在しない、まさによく分からない存在であり、逆にその「よく分からなさ」、つまり匿名性と秘匿性こそ、インターネット発祥のVtuberが持ちえる大きなアドバンテージだと私は思っている。
原作者が居るわけでも無く、声優が居るわけでも無く、しかし確実にインターネットに生きている。
そんな意味不明の存在であることこそが、Vtuberの一つの到達点だと私は主張するのだ。
Vtuberとストリーマーの違い
そうした匿名性がある一方で、Vtuberの良い点に双方向性を挙げる人も多いと思う。
視聴者参加の企画、コメント読み、マルチプレイのゲーム、Twitterの存在。テレビのアイドルや芸人よりもリアルタイムかつ密接な距離感にあるという点を、Vtuberを見る楽しさと述べる声も大きいのは確かだ。
しかし、この利点に関してはVtuberというよりストリーマーの持つ利点に近いのではないだろうか。言ってしまえば、これらは別にVtuberじゃなくても満たせる需要なのだから。
ストリーマーとしてのVtuberと、インターネットのキャラクターとしてのVtuber、そこの境界が曖昧なのもまた、インターネットらしさと言えよう。
おわりに
Vtuberという言葉は現在、非常に広い範囲の活動者を包括しているが、筆者はインターネットのキャラクターとしてのVtuberを強く応援している。
Vtuberには「なんかあんまりよく分からん存在」であり続けて欲しいのだ。
「なんかYoutubeにいっぱい動画上がってるし、ライブ配信もしてるし、Spotifyで音楽配信されてるし、フェスにも出てるし、飲食のチェーン店ともコラボしてるこのアニメキャラみたいなのって誰?」
と聞かれた時、多くを語らずに「インターネットのキャラクター」とだけ答えられるような存在。
これ、めちゃくちゃ素敵だとは思わないだろうか?